■「相続法改正」とは
2018年7月6日に、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)が成立し、同月13日に公布されました。
今回のこの一連の法改正は、「相続法改正」と呼ばれています。民法の契約について定めたルールなどを改正した「債権法改正」と合わせ、実務を大きく変更しうるものとして、着目を集めています。
■「相続法改正」の目的
今回の相続法改正の目的は、大きく分けて、以下の3つの目的があると考えられています。
①遺言の利用を促進する
遺言とは、亡くなる前に文章などで一定の意思表示をしておくことで、死後の財産をどのように分割するか等を決めておける制度のことをいいます。
遺言は、民法にしたがい適切な文章を作成すれば、遺された遺族間でのトラブルを防止することができるなど、利用することに大きなメリットがあります。
今回の相続法改正の目的の1つは、この遺言を利用しやすいものに変更し、より多くの人に利用してもらえるようにすることです。
具体的には、以下の点について改正をしています。
・自筆証書遺言の方式緩和
相続法改正によって、自筆証書遺言の方式が緩和されることになりました。
今までは、基本的に遺言書の全てを自分で書くことが求められていました。
改正により、遺言の文章のうち、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録は自書でなく、パソコンやワープロなどで作成してもよいことが認められました。
自分の財産の全てを把握して、その一覽を手書きで作成するのは大変骨の折れる作業といえます。これを自書しなくてすむことにより、遺言書作成の負担が軽減されることになりました。
・法務局による自筆証書遺言の保管
今回の相続法改正によって、法務局における遺言書の保管等に関する法律が設けられました。
今までは、自筆証書遺言を保管してくれる公的機関は存在しないため、自宅に置いておくか、信頼できる人に渡しておくなどしなければなりませんでした。そのため、悪意のある人によって遺言書が毀損、破棄されるなどの事態が発生してしまい、トラブルを招いてしまう危険性がありました。
改正により、自筆証書遺言(民法968条)を法務局が保管してくれるサービスがスタートすることになりました。これにより、遺言者は、遺言書が紛失や偽造、隠匿されるおそれなく遺言書を保管させることができます。
②配偶者の保護
相続の目的の一つは、遺された家族の生活の保護にあります。
特に、配偶者は、被相続人(亡くなった方)と家計が同一である場合が多く、その生活を保護する必要性が高いといえるでしょう。
今までの民法も、配偶者は必ず相続人になるなど、配偶者に他の相続人と比べてより厚く保護してきましたが、今回の改正は、実態に合わせて、より配偶者の保護を手厚くする内容になっています。
具体的には、以下の点について改正しています。
・遺産分割前の預貯金の払戻し制度の発足
今までは、相続人が複数いる場合、被相続人(亡くなった方)の持っていた預金口座は不可分債権として、遺産分割が終わるまで相続人が引き出すことは、原則としてできませんでした。
改正によって、遺産分割が完了する前から、預貯金口座から被相続人(亡くなった方)の現金を引き出すことが可能になります(改正民法909条の2)。
これによって、被相続人(亡くなった方)が家計を管理していた場合、その配偶者が早期に生活を安定させることができることにつながります。
・配偶者居住権
改正民法1028条で新しく、配偶者居住権という権利が創設されました。
配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者が、被相続人が所有していた建物に移住していた場合、その居住していた建物全部について無償で住み続けることができる権利のことをいいます。
今までは、相続人が配偶者を含めて複数人存在していて、主な相続財産が被相続人(亡くなった方)名義の自宅のみであった場合、家を相続人間で分配しなければならず、配偶者が生活の拠点を失う場合や、自宅の相続において大きな金銭負担を強いられる可能性がありました。
今回の改正により、配偶者居住権が設定され、このような不都合を解消できる、より柔軟な遺産分割が可能になりました。
③遺された者の公平の実現
今回の相続法改正によって、より遺された利害関係人の実質的な公平を図ることができるようになりました。
具体的には、以下の点を改正しています。
・特別の寄与
改正前では、生前の看護などによる寄与分を考慮できる者は相続人に限られていました。
今回の相続法改正では、相続人でない者についても、特別の寄与があった場合には、特別寄与料の支払いを相続人に対して請求することができるようになります。
加島法律事務所は、相続法改正にも対応し、様々な相続問題についてご相談を承っています。
お困りの際は、お気軽にご相談下さい。
弁護士による相続法改正解説
弁護士 加島 光が提供する基礎知識
-
退職金が財...
離婚をするにあたって、財産分与に関して悩んでいる方もいらっしゃる...
-
後遺障害が...
交通事故で後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けるこ...
-
遺産分割
遺産分割とは、共同相続人間に相続が生じ、共有となった相続財産につい...
-
失踪した配...
配偶者が急にいなくなり、連絡がつかない状態になってしまい、そのまま...
-
審判離婚
■審判離婚とは 審判離婚とは、離婚調停において夫婦間の合意が得られ...
-
限定承認
限定承認とは、相続財産のうち、プラスの財産については全て相続し、マ...
-
【弁護士が...
当事者同士の協議で離婚についての話がまとまらない場合、離婚調停を...
-
相続におけ...
相続の場面において、「念書」が持つ意味には注意しなければなりません...
-
悪質クレー...
何度も電話をかけてくる。何度も店舗や事務所にやってくる。そうしたし...